大自然のなかのおもてなしが、キャンプの間口をひろげていく

2023.7.14

大自然のなかのおもてなしが、キャンプの間口をひろげていく

アウトドアや自然を愛し、各界で活躍するさまざまなプレイヤーに、日々の活動の熱源についてインタビューする読みもの企画「火種」。

第3回目となる今回訪ねたのは、「Forest(森林)」「Activity(活動)」「Camp(キャンプ)」「Treasure(宝物)」の頭文字をとってつけられた、那須岳の麓に位置する自然豊かな森のなかのキャンプ場、FACTLAND(ファクトランド)です。

1969年から地元でつづくリゾート会社が、那須の土地柄とキャンパーの声を反映しながら運営している、キャンパーにも動物にもやさしいキャンプ場。

開業から4年という時間を経た今、どんなサイトとしてキャンパーに愛されているのか、今後どんなサイトとして育てていくのか、そしてその想いや工夫といったキャンプ場の舞台裏について、運営の小市麻耶さんに伺いました。

聞き手・写真=河西龍太郎
構成・文=原口さとみ

組み合わせいろいろ。レジャーランドならではのキャンプ体験

――FACTLANDは、美しい林間や自然の環境もよく、施設も充実していて、とても満足度が高い印象があります。キャンプ場の概要を教えていただけますか?

FACTLANDは、北関東最大級の遊園地である那須ハイランドパークの隣に位置していて、キャンプ場の利用者さんには入園無料の特典が付いたり、周辺施設も気軽にご利用いただける、ちょっとユニークなキャンプ場です。

[遊園地の隣でも、静かで豊かな林間キャンプを楽しめる(写真:FACTLAND公式)]

――周辺施設というと?

入園無料の「那須ハイランドパーク」のほか、子どもから大人まで楽しめる日本最大級規模の空中アスレチック「NOZARU」や「りんどう湖ファミリー牧場」、平日なら隣接のホテル「TOWAピュアコテージ」の温泉施設を割引料金でご利用いただけます。

――キャンプと遊園地の組み合わせって、ちょっと意外性がありますね

そうかもしれません(笑)。乗り物の音や歓声が聞こえるのでは? といった声もありますが、ご覧の通り遊園地とキャンプ場でそれぞれ独立しているので、歩いて行ける距離でもその世界観は保たれています。

お客さんからも「もっと商業化しているイメージで来たら、自然に囲まれていいキャンプ場ですね」と言っていただいたこともあるので、みなさん安心してお越しください!

[藤和那須リゾート ホテル事業部ファクトランドキャンプ場 小市 麻耶さん]

――キャンプって1〜2泊の利用が多いと思いますが、時間が足りないですね!

はい、ぜひ連泊でいらしていただきたいところです。別会社さんですが、那須サファリパーク・那須どうぶつ王国など周辺の観光施設も充実していますし、FACTLANDも色々な種類のサイトがあったりグランピングもあるので、飽きずに過ごせると思いますよ。

――お客さんはどんな方が多いですか?

ご友人仲間の方やご家族が多いですね。アスレチックや遊園地、牧場も楽しみに子連れの方がいらっしゃったり、最近だと学生の団体さんが那須岳登山の宿泊としてキャンプ場を使ってくださいました。

そうそう、ご家族で日中は観光施設で楽しんで、夜はお母さんとお子さんはホテル、キャンパーのお父さんだけFACTLANDでソロキャンプ、という使い方をされている方もいました。

――通な使い方ですね〜

使い方といえば、空きがある場合に限りますが、TOWAピュアコテージも同じ会社なので、たとえば雨天や風が強い日に、差額をお支払いいただいてキャンプ利用から移動することもできます。コテージはキッチンもあるので、キャンプの食材もそのまま調理できますよ。

また「湖畔DE団体貸切BBQプラン」といった1組10名から利用可能なプランや、ウェディングやパーティー利用の時にホテルのビュッフェをFACTLANDで展開することもできるので、団体利用も歓迎しています。

キャンプ場こそ、ワーケーションに最適

――僕らが初めてFACTLANDに来たのは、ワーケーションキャンプが目的でした。どんな背景から、ワーケーションというテーマを発信するようになったのですか?

コロナ禍でリモートワークの波がきて、ワーケーションという言葉の認知度も上がってきた頃、TOWAピュアコテージで長期間のワーケーションのプランを出していました。

当時“おうち時間”が長く続いて、リフレッシュを求める人は多かったと思うんですが、ホテルももちろんいいけれど、キャンプなんてそれこそ仕事と自然の行き来ができて最適なのでは? と思いまして。

受付と売店、カフェが入っているトレーラーハウス「MINAMO」では元々Wi-Fi利用も可能だったので、「キャンプしながらMTGや作業をカフェでできますよ」というメッセージを発信していったんです。

[「MINAMO」では文字通り湖の水面を臨みながら作業ができる]

――既に設備が整っていたんですね。FACTLANDではどんなプランを?

残念ながら今は行っていませんが、当時は3ヶ月間好きな時に利用できるというサブスクリプションのプランでした。

今でも「ワーケーションで来ました」と伝えてくださるお客さんがいたり、月に何回かはPCで作業している方を見かけるので、みなさん自由にご活用なさっているんだと思います。

――作業ができるカフェがあり、温泉も徒歩10分で、しっかりした小砂利のサイト。働き盛りのキャンパーに優しいですね!

ありがとうございます。グラウンドサイトと一部のオートサイト以外はすべて、小砂利で層も厚めにしてあるので、水はけの良さは自信があります。小砂利はペグも差しやすいですしね。

[小砂利と芝のバランスのとれた、居心地のいいサイト]

自然にもお客さんにも、チームで柔軟に向き合う

――FACTLANDは2019年の開設当初から少しずつサイトが増えてきているそうで、その背景を教えてください。

運営母体の藤和那須リゾート自体は50年程前から別荘地を切り開いて始まり、その後那須ハイランドパーク、TOWAピュアコテージという順番で施設を増やしてきました。

FACTLANDは、キャンプブームという潮流や万が一の時は災害避難場にもなるといった観点、そして元々ホテルをやっていたので新規事業として始めようと。といっても、最初は今は受付になっているトレーラーハウスのMINAMOで、カフェやテラスでのものづくり体験の企画を展開していたんです。

そういった運営を1年程行った後、芝の4つの区画サイトをオープンしたらとても反響をいただいて。そこから徐々にサイトを広げ、現在全部で70サイトにまでなりました。実は、サイトはすべて社員の手製なんですよ。

――え!? 社員さんが?

私たちの会社には工務店という部署がありまして、重機を持ってきてフリーサイトを切り開いたり。この木を伐ればこのくらいのスペースが確保できるから……といった議論を重ねながらつくりました。

[那須岳も臨めるフリーサイト(写真:FACTLAND公式)]

――そのメンバーの中に、キャンパーさんはいらっしゃったんですか? 区画が近すぎなくて程良かったり高低差があったり、切り開くと言っても景観が損なわれないような工夫を感じたので、実際キャンプする人が関わっているのではと。

ふふ、林間の雰囲気気持ちいいですよね。キャンパーの若いスタッフが何人かいたと聞いています。今ドッグランをつくっているんですが、それも内製です。

つくるだけじゃなくて、たとえば小砂利が雨で流れてしまったり倒木があったときは、連絡すれば隣から機材を運んですぐ来て修繕してもらったり、砂利を敷いてもらったり、チームワークでやっています。

[ドッグランを準備中の様子]

――みなさん柔軟に対応してくださるんですね。

そうですね。何かアクシデントがあったり、お客さんからの要望を耳にしたら、なるべく柔軟に対応するようにしています。キャンプ経験が豊富な方やファミリーで初めて来たという方も、みなさん「これがよかった」「もっとこうしたら過ごしやすい」と色々教えてくださるんです。

売店に並んでいる商品はお客さんの声を反映したものも多いですし、「フリーサイトに搬入時だけでも車の乗り入れ可にしてみては? 」という声をいくつかいただいたので、いまちょうど実現に向けて整備しているところです。

――素敵ですね。そういった声を拾いやすくするための工夫をしているんですか?

うーん……普通にコミュニケーションしているだけですよ。たとえばサイトでかっこいいテントを見つけた時、SNS発信用に写真撮っていいですか? と話しかけることがあるんですが、そこからちょっと雑談したり。

一人でゆっくりしたい方もいると思うので声をかける時は気をつけつつ、でも基本キャンプのお客さんってみなさん気兼ねなく接してくれる方が多いのでありがたいです。

――小市さんのコミュニケーションの心地よさもありそうです。

私この会社に入社して最初の配属がホテルのフロントだったんですが、ホテルとキャンプ場でサービス側もお客さんも全然ムードが違っておもしろいなと思っていて。

ホテルはホテルで、フォーマルなホスピタリティが気持ち良いし、翻ってキャンプ場はサービス側もお客さんもカジュアルな関係性がおもしろい。

もちろん礼節は保ちながら、お客さんを楽しませるだけではなく私自身がフランクに楽しめて、美しい自然のなかで最高の仕事だなぁと日々幸せを感じています。

生き物と共生する那須の文化

――FACTLANDはどのサイトや施設もペット可ですよね。ワンちゃんも含むファミリーみんなで楽しんでほしいという気持ちが伝わってきます。

コテージもケージやグッズなど必要なものが揃ったワンちゃん連れ専用の部屋があったり、那須ハイランドパークでは観覧車も一緒に乗れたり、かなりドッグフレンドリーだと思います。

[那須ハイランドパークの犬連れ専用ページ。専用マップやフォトスポットの案内もある]

「ワンコネット那須協議会」という那須の犬連れ宿泊施設の有志の方々がつくった団体があったり、「日本一ドッグフレンドリーなリゾート」という呼び名があったりするくらい、那須という土地はだいぶ前から犬や動物にやさしい文化があるんですよ。

那須ハイランドパークと那須高原りんどう湖ファミリー牧場では、保護犬の里親探しの活動もしています。よく従業員がスタッフウェアを着て保護犬の散歩をしているので、施設内で会えるかもしれません。

――野生動物とばったり、なんてこともありますか?

野生のお猿さんが、小猿も含めて20〜30頭団体で来場するときがありますね。キツネやタヌキ、クマ、板室という温泉街のほうに行くとニホンカモシカもいたりするみたいですよ。

でも人間の食べ物を持っていくとか、駆除しなきゃいけないなんてことはなくて、長い間共存しています。向こうからすれば元々住んでいるところに人間が来ているわけですし、邪魔しちゃってごめんねって気持ちになることもあります。

――キャンパーにもワンちゃんにも野生動物にもやさしいキャンプ場ということがよく伝わりました…! 最後に、小市さんのFACTLANDにおける展望と、キャンパーへメッセージをいただけますか?

弊社には子ども食堂のプロジェクトがあり、那須塩原駅の高架下で作ったお弁当を販売しているのですが、それを召し上がったお子さんと親御さんたちが30名ほどBBQにお越しになって。こうしたご縁はうれしいですし、そういったイベントを歓迎していけるようにより設備も整えていけたらと思っています。

通常のキャンプも、初心者の方も挑戦しやすいキャンプ場なので、手ぶらキャンプからぜひ気軽に遊びに来てくださいね!

 🏕 🏕 🏕

▶︎iihi Magazine #3

FACTLAND

栃木県那須山の麓、標高700mに位置する高原の森の中。初夏の新緑の候、秋には山が紅く染まり、夜には満天の星に囲まれる自然一体型のキャンプ場。

https://iihi.life/camp/C090021/

・住所

栃木県那須郡那須町大字高久乙3375-1050

・サイト

オートサイト(19区画)、フリーサイト(25区画)、手ぶらプラン(3組)、グラウンドオートサイト(23区画)

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