キャンプは生きるための充電装置。フリースタイルに突き進む、旅×キャンプの挑戦
2023.3.13
こんにちは! iihi編集部の原口です。
キャンプ好きの2人から生まれたキャンプポータルサイトのiihiは、キャンプ場を探す時や魅力的なキャンプ場を見つけた時の高揚感、好奇心・探究心がうずく瞬間を大切にしたいと考えています。
そこで、キャンプやアウトドアを愛し各界で活躍するさまざまなプレイヤーに、日々の活動で探究していることやその熱源にあるものをインタビューする企画「火種」をスタートします。
第1回目で訪ねたのは、旅とキャンプをテーマに、自転車やロングトレイルなどマルチスタイルなキャンプをしながらブログやYouTubeでコンテンツ制作・配信をしているCAMPたかにぃさん(https://camptakany.com/)。
身一つで自由にキャンプライフを満喫するCAMPたかにぃさんは、何を軸に、どんなことをエネルギーに、どうその活動を展開しているのか……そんな、CAMPたかにぃさんの活動の力学を、どうぞお楽しみください。
聞き手・文=原口さとみ
合いの手=河西龍太郎
写真=上野友暉
約300泊で味わってきた、旅してこそのキャンプ
―― 名前にCAMPとあるほどキャンプ愛の強いたかにぃさん、普段どんな活動をしているんですか?
たかにぃ 「旅×キャンプ」をテーマに、キャンパーとして「MINIMALIZE GEARS」というブログやYouTube、オンラインショップ運営をしながら活動しています。フリースタイルでどこに行っても楽しみたいので、なるべくシンプルにウルトラライト(UL)に。バックパック1つ、自転車、ハイキングを主軸にキャンプするのが僕の基本形ですね。この前は自転車担いで飛行機で北海道トレイルキャンプもしてきましたよ!
[3週間の北海道自転車キャンプ旅にて(写真提供:CAMPたかにぃ)]
―― ULに至った背景は?
たかにぃ なんかこう、僕いつもフレッシュな感覚を求めているんですよね。キャンプしている時の環境や場の醸し出す雰囲気が好きなんですが、未知の場所や見たい景色を追い求めた結果、どこにでも行ける装備ということで、ULキャンプに着地しました。
河西 たしかに、山頂や頂上を目指す途中のキャンプでしか味わえないものってありそうですね。
―― その発見に至った、たかにぃさんのキャンプ歴を教えてもらえますか?
たかにぃ 一番最初は、2015年に友達とギアは何も持たずフルレンタルでグルキャン(グループキャンプ)でした。僕だけキャンプにどハマりして、初キャンプから約1年後にソロキャン(ソロキャンプ)を始め、そこからは着々と自転車キャンプデビュー、トレッキングデビュー、そして2022年にはロングトレイルに挑戦しました。
[初キャンプの時の様子(写真提供:CAMPたかにぃ)]
河西 ハマってからの加速度がすごい。
たかにぃ 自転車はお金を浮かせるための手段だったけど、結果的にその時の“旅感”がめちゃくちゃよくて。グルキャンの時は2ヶ月に1回程度のキャンプだったのが、ソロキャンをし始めてから毎週のように行くようになりました。
―― 愚問ですが、これまでのキャンプ泊数は大体……?
たかにぃ え、数えられない(笑)。年間50泊は超えてるだろうし、長期で行ったの含めたらもう……200泊? 300泊? もうぶっ壊れてますね(笑)
長年の課題に突き動かされ、原野の天国へ
―― その膨大な経験のなかで、印象的だったキャンプはどんなものがありますか?
たかにぃ 初めて挑戦するスタイルのキャンプはどれも印象的なんですが、そのなかでも総歩行距離340kmとなった、2022年のJMT(ジョン・ミューア・トレイル。アメリカを代表する西海岸のロングトレイル)ですね。長年抱えていた課題でもあったので。
―― 課題?
たかにぃ あ、僕キャンプする時いつも課題を設定していて。夢とか挑戦って言い換えてもいいんですが、僕のニュアンス的には「課題」なんですよね(笑)。ダッチオーブンで丸鶏使ってみたい、石の上で肉焼いてみたい、海外でバックパッカーしてみたい……そういう憧れみたいなものです。
[JMTの地図。ロングトレイルの地図は防水加工がされていて、雨が降っても破れたり滲まないそう。]
―― なるほど。長年の“課題”だったJMTはどうでした?
たかにぃ 10年も前からずっとためていた課題だったので、期待値がすごかったんです。どんな景色が見れるんだろう、どんな出会いが待っているんだろうと。その期待を超えたものとその反対と、どちらも僕にとっては印象的で衝撃でした。
河西 と言うと?
たかにぃ 実はJMTって景色があまり変わらないので、最後の一週間あたりはちょっと飽きて……。週1くらいで街に降りて食材を調達していたんですが、そこで食べるハンバーガーが恋しくなったり。非現実も長期になると日常化してくるというか、長ければいいってもんじゃないなと学びました(苦笑)
―― 期待を超えてきたことは?
たかにぃ めちゃくちゃいっぱいありましたよ! 天国みたいな景色が広がっていて、ハイカーも国籍豊かでみんなニコニコ幸せそうに挨拶しあう天使みたいな人たちばかり。まじで楽園でした。旅を超えて、もう大冒険。
[この大自然を1ヶ月間歩きつづけた(写真提供:CAMPたかにぃ)]
―― 日本のトレイルとの違いは?
たかにぃ 日本だとすれ違った人とは挨拶して大抵おしまいだけど、JMTではそこから会話が広がって。ロングトレイルって長期間歩くから人間関係が生まれてくるんですよ。自分と歩幅が近い人と一緒に休憩したり、追い抜かして追い抜かされて。
河西 また会ったね! ってなるんですね。
たかにぃ そうそう。で、今晩一緒にキャンプしない? って仲良くなり、その人を介してまた別の人とつながり、最終的に5〜6人で山嶺で火を囲んで飯食ってると「俺こういうのがやりたかったんだよな」って。
―― 最高じゃないですか!
たかにぃ 最高なんだけど、僕英語が喋れないので、3日も一緒にいると相手に気を遣わせている感じがしてきて……それが途中苦痛でもあったし寂しくて。悔いを残したので、僕の次の課題は英語を話せるようになってキャンプする、です!
―― 国内キャンプで印象的だったものは?
たかにぃ JMTの予行練習として行った、北海道の屈斜路湖でのバイクパッキング(自転車キャンプ)ですね。SNSでつながっていた北海道のブロガーさんと現地集合したんですが、屈斜路湖自体も良かったし、無料で開放されている露天風呂がすごく思い出深いです。
[バイクパッキングでは、サドル下など少しの隙間も収納に活用する]
河西 5月下旬くらいでしたっけ、まだ寒い時期ですよね?
たかにぃ そう。合流したのがもう夜中で寒くて、温泉入ろうとなって。丸見えの脱衣所で服脱いで、硫黄強めの天然温泉にぷかーっと浸かって上を見上げたら満天の星空で。人との出会いも、疲れた体でそんな原野の温泉にひたるなんてシチュエーションも、やっぱり旅とキャンプの醍醐味だなって思います。
趣味を仕事にしても、好きな気持ちは変わらない
―― 今はキャンプを仕事にされていますが、もともとは趣味だったものを仕事にしてみて何か変化はありましたか?
たかにぃ 仕事の価値観が変わりましたね。よく耳にすることですが、趣味を仕事にしたらつまらなくなる、って僕もいろんな人に言われて。でも心のなかで「本当に? みんな全部試したの?」と思っていました。
でも、例えばキャンプのインストラクターとして雇用されながらキャンプをしたら、最初は新鮮でも、自分もいずれキャンプが好きじゃなくなるイメージができてしまって。
そこで、ブログやYouTubeなら収益を上げながら自分のペースでキャンプができて、キャンプをずっと好きでいられるだろうと思い今の働き方をスタートしました。
河西 始めてみてどうでした?
たかにぃ 全っっ然収益上がりませんでした(笑)。当時は自分が書きたいことだけを書き続けていたんですよね。わずかな読者の方に「これについて書いてほしい」と書き込みがあれば僕なりにアレンジして書くこともあったんですが、SEO(検索エンジンで上位に表示されやすくする手法)って言葉さえその時は知らなくて。
河西 おお
たかにぃ ブログもYouTubeも運営するうちにいろいろとつながりブロガーやYouTuberの友人ができたんですが、その友人に助けられました。こういう視点をもって、こういうことを仕込んで……と勉強させてもらって、愚直に真似するうちに収益化できました。
―― 収益が上がるまでの期間、キャンプ行けてました? やっぱりもういやだ! とはならず?
たかにぃ 行ってましたよ! 僕にとってキャンプは充電なので、アルバイトで必要最低限の生活費をまかないつつ、シフトを調整して隙間にキャンプの予定をいれて。だから当時のブログは数少ない手持ちのギアを紹介していました。
河西 崖っぷちにいながら、好きなことをし続けたんですね。
たかにぃ もう背水の陣だったから(笑)。YouTuberやブロガーの仲間に勉強させてもらって、ライバルとして刺激を受けて鼓舞されて今があります。本当に感謝です。
冒険は、さらにウルトラライトに海を渡って
―― これからはどんなキャンプをしていきたいんですか?
たかにぃ 僕のモットーは「自由なライフスタイルで生きる」なんですが、住所不定になろうと思っています。
河西 え?
たかにぃ 定住する家を持たずに場所を転々としながら生活する「アドレスホッパー」をしようかと(笑)。
JMTの挑戦でアメリカに行ったのがすごくエポックだったんですよね。広大なアメリカでそのデカさを目の当たりにして、自分が小さな島国のなかでいろんなことにビビっていたことに気づいて、もっと挑戦していこうと。
僕、キャンプの事業を始める前からずっと「住所不定」という単語に惹かれていて。当時「住所不定キャンパー」というブログがあって憧れていたんです。時代も進んで今は「ADDress」なんてアドレスホッパーのためのサービスもできたので、ついにやる時がきたなと。
[日本各地を巡っている愛車のTREK。次はどこを走るのだろう。]
河西 定住地を手放して、どんなことから始めるんですか?
たかにぃ まずは多拠点で日常をどう過ごせるのか実験したい。いろんなケースがあると思うんです。結局拠点にこもって映像編集ばかりしたり、逆に遊びまくって全然YouTube更新しなかったり、外食が増えてお金がなくなったり……いろいろな壁が出てくるはずなので、それをどうクリアしていくか楽しみです(笑)
―― ホッピング先は、海外にも広げるんですか?
たかにぃ そうですね、JMTは徒歩だったので、今度は海外でバイクパッキングに挑戦したいし、いずれは世界で生活してみたい。キャンプに限らずアウトドアというくくりで、ダイビングやバックカントリースキーなど未開拓のアウトドアに興味があるんです。
アウトドアのいいところってその土地の地形や環境を噛み締められることなので、その場所を味わうための手段を増やしていきたいです。
河西 わかります、それを追い求めるのは永遠に楽しいでしょうね。
―― 最後に、これからキャンプを始める人や、たかにぃさんのように自転車キャンプ、トレイルなどに挑戦しようとしている人に一言伝えるなら?
たかにぃ 「気持ちを高めてください!」。行きたい気持ちを増幅させまくり、ある時「もう限界だ!」っていうのが来たらそれがその挑戦をする時。
精神論ぽく聞こえるかもしれませんが、結構本気ですよ。トレイルのような危険もあるものなら大事な準備につながりますし、そのプロセスがあるからこそ感じられることもあるし、気持ちを育てる過程も含めて最高のキャンプになると思います。
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おわりに
コロナ禍でアウトドアの人気が加速し、いま世界中でたくさんの人がキャンプを楽しんでいますが、キャンプは趣味で生業はまた別、という人が大半でしょう。
「好きを仕事に」と言うは易し。しかし、たかにぃさんは自分の気持ちに嘘をつかず、壁にぶつかれば愚直に努力し、見たい景色を探究しつづけている、いわば冒険家でした。
最後に語られた「気持ちを高める」という言葉に詰まっていた、長年抱きつづけていたバックパッカーや海外渡航といった夢を達成するまでの経験の数々。
キャンプの楽しみは十人十色。たかにぃさんが全力で満喫するキャンプ記事・動画が、誰かのキャンプをもっとおもしろくしたり、新たなアイデアをブーストさせる……そんな火種になり、キャンプを楽しむ人・楽しみ方がもっと拡がる未来が楽しみになる取材となりました。
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▶︎iihi Magazine #1
CAMPたかにぃ
旅とキャンプのWebメディア「MINIMALIZE GEARS」主宰、YouTuber。
バックパックキャンプ(徒歩キャンプ)や自転車キャンプをベースに、ウルトラライトキャンプスタイル(ULキャンプスタイル)で登山やロングトレイル等長距離の旅にもチャレンジ中。
最近のお気に入りのギアはソロ用テントの「NINJA TENT(PAAGO WORKS)」、お気に入りのキャンプ場は「千代田湖キャンプ場」。
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© iihi